アレルギー疾患とは

アレルギー疾患

アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)をきっかけとして、病的反応がみられている状態をアレルギー反応と呼びます。
このアレルギー反応によって、引き起こされる様々な症状がアレルギー疾患です。
同疾患には、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギー、金属アレルギーなどがあります。

アレルギーが生じるメカニズムについては、人間の身体に備わっている免疫が関係しているとされています。
人体では、体内に侵入しようとする抗原(細菌、ウイルス等の病原体)に対して、それを排除するための物質(抗体:免疫グロブリン)が作られます。
その後、同様の抗原が体内に侵入しようとした際には前回作られた抗体が反応して、体外へ除去しようと働くようになります。
これを抗原抗体反応と言い、一般的には免疫と呼ばれているものです。

この免疫(抗体)が作られる過程において、過剰に抗体が作られる、人体に有害でないものにまで抗体を作るといったことが起きるケースがあります。
このような場合、体が過剰に反応するようになり、くしゃみ、流涙、湿疹などの症状のほか、生命にも影響しかねないアナフィラキシー・ショック(血圧が低下、呼吸困難を引き起こし、意識を失う)を引き起こすことがあります。
これがいわゆるアレルギー反応です。
以下の症状に心当たりのある方は、一度医療機関にご相談ください。

  • くしゃみや鼻水がずっと続いている
  • 目の充血やかゆみ、流涙が止まらない
  • 咳の症状が長い期間に及んでいる
  • 原因が特定できない湿疹や皮膚のかゆみがある

など

主なアレルギー疾患

  • 気管支ぜんそく
  • アトピー性皮膚炎
  • アレルギー性結膜炎
  • 花粉症
  • 食物アレルギー
  • 金属アレルギー

など

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは

かゆみの強い湿疹が全身でみられる皮膚疾患で、良くなったり悪くなったりを繰り返します。
かゆみに耐えきれずに皮膚に爪を立てると皮膚症状は悪化します。

早い患者様では生後2~3ヵ月頃から発症します。
乳児期では顔や頭部を中心に体幹や手足にも広がっていきます。
幼児期になると首回りや肘、膝の屈曲部にカサカサした皮膚や湿疹がみられるようになります。
なお同疾患は、これまでは中学生の頃までには多くは治まると考えられてきました。
ただ最近は思春期以降も続く、あるいは成人してから発症するというケースも見受けられるようになりました。
ちなみに思春期以降のアトピー性皮膚炎は、上半身(顔面、頸部、胸部、背中)に湿疹が現れるようになります。

なお原因に関しては解明されたわけではありませんが、家族にアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支ぜんそく 等)に罹患している方がいる、もしくはアトピー素因(アレルギーに発症しやすい体質)の方に起きやすいと考えられています。

治療については、現時点で完治させる治療法は確立していません。
皮膚症状に対する対症療法として、ステロイド系の外用薬やタクロリムス軟膏等を使用します。
また強いかゆみを訴えている場合は、抗アレルギー薬の内服も用います。
上記以外にも、保湿剤などを使ってのスキンケアも重要となってきます。

花粉症

花粉症とは

花粉がアレルゲンとなって発症する様々なアレルギー症状がみられている状態が花粉症です。
原因となる花粉としては、スギやヒノキが有名ですが、患者様によっては、ケヤキ、イネ、ヨモギ、ブタクサなどの植物が原因の可能性もあります。
したがって春先のみとは限らず、初夏や秋に飛散する花粉が原因で発症する場合もあります。
いずれにしましても飛散時期限定となります。

主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー性鼻炎をはじめ、目のかゆみ、流涙、目やになどのアレルギー性結膜炎の症状がみられます。
そのほかにも、痰が伴わない咳、のどのかゆみ、湿疹等の皮膚症状が出ることもあります。

治療方法についてですが、まず原因となる花粉が鼻の粘膜や目に入り込まないための対策(マスク、眼鏡の着用、帽子をかぶる、室内に花粉が入らないようにする 等)が必要です。
そのうえで、アレルギー症状が強ければ、抗ヒスタミン薬の内服薬を使用します。
また鼻づまりがひどければ点鼻薬として鼻噴霧用のステロイド薬、眼症状では抗アレルギー薬等の点眼薬を使用していきます。

このほか根治を目指す治療として、原因となるアレルゲンを体内に少量ずつ入れて体を慣れさせるアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法 等)もありますが、治療は3年以上必要とされ、必ずしも完治するというわけではありません(同治療を行った方の多くは、症状が改善傾向にあります)。

アレルギー性結膜炎

アレルギー性結膜炎とは

目の結膜の部分等にアレルゲンが付着するなどして、結膜が炎症を引き起こし、様々なアレルギー症状がみられている状態がアレルギー性結膜炎です。
原因としては大きく分けて2つあるとされ、ある時期にだけ限定して起きる場合を季節性アレルギー性結膜炎と呼びます。
この場合は、原因の大半は花粉(スギ、ヒノキ、シラカバ 等)です。
また季節に関係なく一年中発症する場合もあります。
これが通年性アレルギー性鼻炎で、主にハウスダスト(ダニの死骸、ペットの毛、カビ、フケ等とホコリが混じったもの)が原因となります。

主な症状として、結膜に炎症が起きることが原因で、目が充血し、かゆみがみられるようになります。
そのほかにも、目やに、流涙、目の中がゴロゴロするなどの症状を訴えることもあります。

治療についてですが、アレルゲンが特定されているのであれば、まず原因の除去や回避に努めるための環境づくりをしていきます。
眼症状を抑える治療としては、抗アレルギー薬やステロイド系の点眼薬などを使用していきます。

食物アレルギー

食物アレルギーとは

特定の食物がアレルゲンとなって発症する様々な症状のことを食物アレルギーと呼びます。
なお、どの食物がアレルゲンになるかは、人によって異なります。
よくみられるのは、乳製品(牛乳、チーズ、バター 等)、卵、大豆、小麦、そば、甲殻類(カニ、エビ 等)、ナッツ類などです。

同アレルギーは、乳児や幼児に起きやすいです。
主な症状として、じんましん、皮膚に発赤、むくみ、息苦しくなるほか、腹痛、嘔吐・吐き気、下痢等の消化器症状などがあります。
なお、あまりにもアレルギー反応が強すぎるとアナフィラキシーという、生命にも影響しかねない状態になる場合もあります。

治療については、まずアレルゲンが何かを特定することが重要で、判明していればその食物を避けます。
特定するための検査としては、血液検査、プリックテスト、食物除去試験などを行い、原因とされる食物を特定します。
判明すれば、その食物を避けます。

原因となる食物を食べ、アレルギー症状が出た場合ですが、軽度であれば何の治療をしなくても治まるようになります。
ただアナフィラキシーの症状がみられるのであれば、速やかにアドレナリン自己注射器(エピペン)による静脈注射を打つ必要があります。

金属アレルギー

金属アレルギーとは

ある特定の金属に皮膚が接触してしまうことで、接触部位に、皮膚炎、発赤、ただれなどの皮膚症状が起きている状態が金属アレルギーで、これもアレルギー反応の一種です。
発症しやすい金属の種類としては、水銀、ニッケル、コバルト、クロム、金などがあります。
これら金属製品が含まれる、アクセサリー(イヤリング、ネックレス 等)、メッキ、塗料などに触れることで発症します。

なお上記以外にも、歯科材料や食物から金属を体内に取り込んで全身に症状が出る場合もあります。
このケースでは、身体の広範囲で、皮膚に赤み(ブツブツ)、かゆみなどの症状がみられます。

治療についてですが、まずアレルギーの原因とされる金属にできるだけ触れないための環境づくりが必要となります。
なお歯科材料の金属製品が原因であれば、金属ではない材質に変更します。
またアレルギー反応による皮膚症状を抑える治療として、ステロイド外用薬、抗ヒスタミン薬の内服などの薬物療法を行います。

アナフィラキシー

アナフィラキシーとは

一口にアレルギー反応と言いましても様々な症状がありますが、その中でも重篤な状態にあるとアナフィラキシーと診断されます。
原因とされるアレルゲンが体内に入ることで起きるもので、皮膚、消化管、呼吸器、循環器など複数の臓器で全身性のアレルギー症状が現れます。
その反応というのが過敏で、生命に影響を与えるほどの状態にもなります。

主な症状ですが、全身が赤く腫れる、じんましんが起きる、さらにのどの粘膜が腫れるなどして呼吸困難にもなっていきます。
さらに血圧が急激に低下するなどして意識障害が起きるようになります。
これがアナフィラキシー・ショックです。

アナフィラキシーが起きる原因としては、食物アレルギー、ペニシリン等を使用することによる薬剤アレルギー、ハチの毒などがあります。

治療方法としては、アナフィラキシー症状によって、患者様がぐったりしている場合は、アドレナリン自己注射薬(エピペン)を携帯しているのであれば、速やかに同注射を打つようにしてください。
その後、医療機関を受診してください。
また注射できない場合は、意識状態、顔色、呼吸、脈拍などを確認し、必要であれば一次救命処置を行うなどして、直ちに医療機関に搬送します。

なおアナフィラキシーの症状が軽度の患者様については、抗ヒスタミン薬の内服、咳の症状を訴えている場合は、気管支拡張薬の吸入などの薬物療法を行います。